今月のクローズアップ第25回商品クローズアップ「病気保障の付いた住宅ローン」-病気でローン残高がゼロになる保険付き
保障内容に要注意
金融機関各社のサービス競争が進むなかで、このところ目立つのが、病気にかかった時に返済を支援する保険を住宅ローンに付ける特約。「がんにかかると住宅ローン残高がゼロに!」などと宣伝されています。ところが、金融機関によって保障内容は微妙に異なるのです。現状と注意点を探ってみました。
情報提供日:2006年11月1日
保障の対象が、死亡や高度障害から、がんや生活習慣病へ拡大
 住宅ローンを借りる時に加入する団体信用生命保険(団信)は、借り手が死亡した場合に、その時点のローン残高と同額の保険金が下りて、その保険金で一括繰り上げ返済することができるというしくみ。保険でローンがゼロになって、残された遺族に負担がかかることはなくなる、というわけです。
 
 とはいえ、死亡しないまでも、重い病気にかかったら・・・という健康不安は残るでしょう。従来の団信でも、死亡以外に高度障害になった場合も対象になっています。ただ、高度障害というのは、両目の失明や中枢神経・精神や胸腹部臓器などへの著しい障害で死ぬまで介護が必要になった場合など、ほとんど回復不能な状態。ポビュラーな病気は対象になりません。 図1.日本人の死亡原因(2005年)
 
図2.保障対象になる主な病気  そこで登場してきたのが、保障対象になる病気の範囲を広げ、しかも、回復して社会復帰した場合でも保険が下りるというもの。4〜5年前から「ガン保障特約付き団信」が、外資系保険会社が引き受け手になって、地方銀行を中心に広がりました。
 
 その後、がんに加えて急性心筋梗塞と脳卒中、いわゆる「三大疾病」と呼ばれる病気を対象にした保険が登場しました。引き受け手に国内の保険会社も参入し、都市銀行や信用金庫などへも広がっています。さらに、ここ1〜2年は、三大疾病にとどまらず、日本人の死亡原因の上位に来る高血圧や糖尿病といった重度の慢性疾患、いわゆる「生活習慣病」まで範囲が拡大しています。
 
発病時期、免責期間、保険料…各社で違う保障内容と条件に注意
 万一の場合に備えて、幅広い保障を受けられるようになったのはありがたいですね。ただ、一般的な団信はどこの金融機関でもほぼ同じ内容ですが、三大疾病や慢性疾患を対象にした新しい特約付き保険の場合、金融機関によってまちまち。似たような名称でも、保障内容が微妙に違うことに注意しましょう。
 
 たとえば都市銀行の2つのケースを比較してみましょう。三井住友銀行は05年夏から「三大疾病保障付き住宅ローン」の取り扱いを開始。06年夏に入り、5大慢性疾患と呼ばれる高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎を加えた「三大疾病ワイド保障型+5」に改定しました。一方、三菱東京UFJ銀行は、06年春から「7大疾病保証付き住宅ローン/ビッグ&セブン」をスタート。こちらは、三大疾病と、5大慢性疾患から慢性膵炎を除いた4疾患を加えたもの。
 保障対象になる病気が1種類違うだけで、同じように見えますが、中味はかなり異なります。
 
図3.保障の内容は、金融機関によって異なる
 
 まず、保障開始までの期間。医療保険は契約してからすぐに保障が始まるわけではありません。融資が実行されてから一定の猶予期間があるのです。
 三井住友銀行の場合は、猶予期間が90日で保障は91日目から始まります。三菱東京UFJ銀行は、融資実行の翌々月の初日から保障がスタート。月初に融資実行の場合は最大2ヶ月間の猶予となります。
 いずれも、猶予期間中に病気になった場合は保障されませんのでご注意を。
 
 さらに、病気になったらすぐに保険が下りるというわけではありません。一定の「免責期間」があるのです。保険金の支払い方も異なります。
 三菱東京UFJ銀行では、病気の種類にかかわらず、保障開始日以降に病気にかかって入院した場合や、医師から自宅療養の指示を受けたために働けない状態が続いてから30日間が免責期間。それを超えると、働けない間は1ヶ月につき毎月返済額相当額が保険金として支払われます。その状態が1年継続した時点で、ローン残高全額分の保険金が出るしくみ。
 つまり、1年以内に治ったり、病気が続いていても仕事ができるようになったらそれ以降の保険は下りません。
 
 これに対して、三井住友銀行では病気の種類によって対応が変わります。がんの場合は、保障開始日以降に発病して、医師の診断が確定した段階でローン残高全額分の保険金が出ます。免責期間はありません。5年生存率の高い初期がんでも保障対象ですから、完治すれば健康を回復した上に、それ以降のローン返済からも解放されるというわけです。
 
 がん以外の三大疾病には免責期間が60日間あります。ローン残高全額分の保険金が出るのは、急性心筋梗塞の場合は発病して60日間以上にわたって働けない状態が続いた場合。脳卒中の場合は、言語障害・運動失調・麻痺などの後遺症が60日以上続いた場合です。
 さらに、5大慢性疾病の場合は、発病して就業不能の状態が1年以内のときは毎月返済額相当額、1年を超えるとローン残高全額の保険金が下ります。
 
 なお保険料は、三菱東京UFJ銀行が年齢性別に応じてローン返済とは別に支払う形。2000万円を年利3%、35年返済で借りたとすると、借入時に35歳の男性の場合、初回支払いが215円。返済が進むにつれて金額が増え、30年後は3473円となります。
 
 三井住友銀行の場合、保険料は店頭金利に0.3%を加えた金額で、ローン返済と併せて支払う形となります。上記と同じ条件で初月が3387円です。トータルでは、金利が変わらないとすると三菱東京UFJ銀行のほうが少ない保険料になるようです。 図4.保障内容で注意するポイント
 
一般の医療保険に負けない各種特約、介護保険も登場
 他の金融機関でも、三井住友銀行と同じパターンの特約を付けているケースが多いようですが、保障開始までの扱い、免責期間など、微妙に違うケースが少なくありません。保険料も「店頭金利プラス0.15〜0.3%」と幅があります。がんの診断を受けると100万円の一時金が出るケース、余命6ヶ月と診断されると死亡保険金が出るリビング・ニーズ特約を付けたケース、病気やケガを問わずに入院費用が出る特約など、バリエーションは多彩です。
 
 高齢化社会の到来を受けて病気以外にも範囲は広がっています。たとえば太陽生命保険が販売し、秋田銀行が採用した「介護保障特約付き団信」など。今後、このような各種保険と組み合わせたローン商品の差別化が進むといるでしょう。
 
図5.介護保障特約付き団信の対象になる「要介護状態」
 
 保険料と保障内容、それぞれのメリット・デメリットをよく検討したうえで選びたいものです。
前回へ 次回へ
↑このページの上部
住宅ローンを知ろう トップ