「十文字先生が答える“住まいの税金Q&A”」第2回

平成17年度税制改正 速報第2弾

前回に引き続き、平成17年度税制改正の住宅関連の内容について解説します。税制改正大綱には出ていませんでしたが、土地や建物の税金に関係する「定期借地権の一時金の取り扱い」についての変更がありましたので、それについても触れておきましょう。
Q1.中古住宅の特例措置に関して、新耐震基準と築年との関係は?前回の説明では、新耐震基準に適合していることを前提に、中古住宅にかかわる特例措置の築後経過年数の条件がなくなるとのことでしたね。でも、築年数の古い住宅は、新耐震基準に合わないんじゃないですか?(神奈川県/T・Yさん)
 
A1.建築士の証明があれば、特例が適用されます。
十文字先生「今回の改正では、中古住宅にかかわる各種の特例措置について、『築後経過年数の要件撤廃』と『新耐震基準への適合の要件化』がセットになっています。新耐震基準は、1981年6月1日以降の建築確認申請から施行されるようになりましたから、この日付以降に建築確認を取っている住宅は、新耐震基準に適合していると見なしてもいいでしょう。

  一方、81年5月31日以前に建築確認を取っている住宅については、建築士の検査を受けて、新耐震基準に適合していることの証明書を取る必要があります。
新耐震基準が制度としてスタートする前でも、実質的に同レベルの耐震性を備えた設計施工が行われている住宅や、新築時はダメでも後で耐震改修して耐震性を高めた住宅などの場合は、築年数が古くても、特例の適用が受けられるというわけです」
十文字先生「ところで、築年数と新耐震基準との関係で、ちょっとした“ねじれ現象”が生じていることを指摘しておきたいと思います。

 先ほど『築後経過年数の要件撤廃』と『新耐震基準への適合の要件化』がセットになっているといいましたが、これには例外があります。税制改正前から特例措置を受けられていた「耐火建築物は25年以内、非耐火建築物は20年以内」の住宅については、新耐震基準への適合が要件となっていないのです。」
図表1.中古住宅にかかわる特例措置の適用と、築後経過年数の関係
 
十文字先生 「図1をご覧ください。まず、木造一戸建てのような非耐火建築物の場合、築20年以内なら全て1981年6月以降に完成したものなので、基本的には新耐震基準を満たしているとみなすことができます。改正前は、新耐震基準を満たしているにもかかわらず、築20年以内という制限が壁になって特例を受けられなかったものが、今回の改正で救済されるともいえるでしょう。

 これに対して、マンションなどの耐火建築物は、築25年以内の中に新耐震基準がスタートする前の物件が含まれています。マンションの建築には、最低でも半年以上はかかりますから、81年6月に建築確認申請をしても完成は82年以降。2005年4月を起点にすると、築24〜25年の物件は新耐震基準に適合していないということになるのです。それでも特例は受けられます。
  一方、築26年以上の物件は、建築士の新耐震基準適合の証明書がないと特例は受けられません。同じ特例を受けられる中古マンションでも、築24年で少し築年が浅いけれども耐震性に疑問があるものと、築26年と築年は古くても耐震性が証明されているものと、どちらを選ぶべきか。
  1〜2年でこの“ねじれ現象”は解消されますが、今年から来年にかけて、築25年前後というボーダーラインにある中古マンションの購入を検討しているなら、こうした視点も考えておく必要があるかもしれません。」
Q2.定期借地権に関する税金も変わったようですが?「国土交通省が出した『税制改正の主要項目』の中に、『定期借地権に係わる税制上の所要の措置(一時金の取扱いの明確化)』と出ていますが、これはどういうことですか?(埼玉県/N・Yさん)
 
A2.定期借地権の一時金の一つとして、一括前払い(前受け)地代方式を認めることで、土地所有者と借地人双方に税務上のメリットが出ます。
十文字先生「今回の『定期借地権の一時金の取扱い』については、税法が変わるわけではありませんから、平成17年度税制改正大綱には入っていません。国土交通省から国税庁へ、これまで曖昧だった運用上の取り扱いをはっきりさせるための文書照会を出し、国税庁が回答したという形式になっています。そのせいか、あまり税制改正のニュースでは取り上げられていませんが、影響が小さくないため、知っておいたほうがいいでしょう。
 まず、定期借地権というのは、ご存じの通り、契約の更新がない借地権契約のことで、図2のように3種類あります。 定期借地権契約をするときには、これまでは地代の他に権利金や保証金などの一時金を設定するのが一般的でした。土地所有者にとっては、ある程度まとまった資金が欲しいため。借地人にとっては、一時金を支払う代わりに月々の地代を抑えられるというメリットがあるためです 。
図表2.定期借地権の種類
 ところが、権利金や保証金には、土地所有者と借地人の双方に図3のようなデメリットがありました。
  たとえば権利金の場合、借り手としての法人が支払っても費用化できない、つまり事業年度ごとに減価償却費や損金として必要経費に計上できなかったわけです。地主にとっても、譲渡所得や不動産所得という形でいっぺんに高い税率で課税されてしまい、手元にあまり残らない。保証金の場合は債権債務の関係が長期間に渡って固定化されるため地主、借り手双方にリスクが出てくるのです。
どちらにしても制度的に使いにくかったために、定期借地権の活用がそれほど進まなかったんですね。
図3.これまでの定期借地権契約の一時金
それに対して今回の措置で、一括前払い(地主にとっては前受け)地代方式が可能になりました。つまり、定期借地権の契約期間中の地代の全部、または一部をまとめて支払う形の一時金を認めるということです。しかも、借り手側は、前払い地代を月額換算して費用として計上できるようになり、地主側も、一度にまとまってもらった前受け地代を月々の地代として収入計上することが可能になりました。

 地主、借り手双方にとってメリットがありますから、これによって定期借地権を使った土地活用が非常にやりやすくなるでしょう。特に大規模な未利用地の開発が進むのではないでしょうか。
図表4.前払い・前受け地代方式のメリット
 借り手が会社員のような個人の場合、前払い地代を支払っても経費計上できませんから、直接のメリットはありません。ただ、地主が土地活用を活発にすることで、定期借地権住宅の供給が増えて選択肢が拡大すると期待できます。
 ※この方式を適用するためには、前受け・前払い賃料であることを明確に記載するなど、一定の書式にのっとった契約書を作成して、なおかつ実態もそれに合わせることが必要です。また、借地人が前払いした一時金は資産の取得には当たらないため、その部分に住宅ローンを使っていたとしても、住宅ローン控除の適用は受けられません。注意してください。」
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