


夫婦共有名義で購入すると、住宅ローン控除が2倍活用できると前回説明しましたが、「相続時精算課税制度」も同様です。
相続時精算課税制度とは、65歳以上の親から20歳以上の子ども(推定相続人)に贈与する場合、2500万円の特別控除を受けられるというしくみです。控除枠を超えても一律20%の贈与税で済みます。
さらに2009年末までに住宅取得等資金(※)を贈与する場合は、特別控除が1000万円上乗せされ、最大3500万円の控除枠に広がる特例もあります。この特例では、贈与する親の年齢制限はありません。この「住宅取得等資金に係わる相続時精算課税の特例」の効果は非常に大きいといえます。
※一定の条件に合った家屋の取得や増改築のための資金
というのも、3500万円の控除枠は、贈与する親1人当たりの金額ですから、父母それぞれから受ければ7000万円。夫婦がそれぞれの親から受ければ、なんと合計で1億4000万円まで、贈与税なしで資金援助することが可能になるというわけです。もし特例を使わずにこれだけの贈与を受けると、6440万円もの贈与税がかかってしまいます。
もっともこれは、あくまでも計算上の可能性で、実際にそこまでの贈与をするケースは少ないでしょうが・・・
夫婦の共有名義にすることによってダブルで受けられる特例は、他にもあります。たとえば「居住用財産の3000万円特別控除」。売却したときに出た譲渡益から3000万円も控除できるというもの。条件は、現に居住している建物とその敷地を売却した場合です。したがって、土地だけでは受けられません。
共有名義の注意点は、出資した割合に合わせて持ち分を登記することだと前回説明しましたが、もう1つ注意点があります。仮に夫婦で2分の1ずつ出資して、土地と建物の価値が同じ住宅を購入した場合、どういうパターンで登記するでしょうか。
図2の(a)「夫は土地で妻は建物」、ないしはその逆パターンの(b)で登記してしまうと、居住用財産に係わる特例をダブルで利用することはできないのです。妻か夫の単独適用になります。ダブルで特例を受けるには、パターン(c)のように、それぞれが土地と建物を含む形で持ち分を登記することが大切。
「居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例」も、共働き夫婦で共有名義にしていれば、それぞれが受けられます。ただし、売却するときにどちらかに所得がなければ、その所得がない人は他の所得と損益通算することができないため、実際には特例が適用されません。
なお、最初は夫の単独名義で購入した住宅でも、途中で贈与税をかけずに共有名義にする道があります。「贈与税の配偶者控除」という特例です。これは、婚姻期間が20年以上に達した夫婦間で、居住用財産を贈与する場合に、110万円の基礎控除に加えて2000万円の特別控除を受けられるというもの。使い方次第で、共有名義のメリットを広げることも可能でしょう。
さて「相続時精算課税制度」に戻って、補足説明をしておきましょう。住宅取得等資金に係わる特例は、資金の贈与に限られますが、通常の相続時精算課税制度は、財産の種類を問いません。住宅ローンの肩代わり、不動産の現物でもオーケーです。
その場合、何をどのように贈与するかによって、将来の相続に影響してきます。
キャッシュで贈与した場合、その資金を使って子どもが住宅を取得すれば、子どもの単独名義になります。相続が発生したら、贈与したときの時価で相続財産に組み込まれるのがポイント。
次に不動産の場合は図2のケースと同様に、土地か建物か、または両方を含む持ち分かによって状況が変わってきます。図3をご覧ください。土地と建物それぞれが2500万円の価値があり、合計5000万円の住宅を父親が持っていたときに、そのうち2500万円を子どもに贈与したケースです。
まず、a)は、相続時精算課税制度を使って土地のみを贈与した場合。土地だけが子どもの名義になります。贈与した後に土地が値上がりしたとしても、相続財産には贈与時点の金額で組み入れられるため、結果として評価額が圧縮されることになります。父親の名義として残った建物は、相続時に減価償却資産として評価されますから、時間の経過とともに価値が下がっているはず。土地と建物を合計しても、当初の5000万円を下回ることになります。
仮にデフレで土地が値下がりしていた場合でも、贈与時点の2500万円で評価されるだけですから、トータルで5000万円を上回ることはありません。
一方、b)の建物だけを贈与した場合は、その逆パターン。相続時に建物の評価が下がっていても、贈与時点の金額で財産に含めなければなりません。父親名義の土地が値上がりしていると、その分だけ相続財産の評価も上がります。その結果、土地と建物を合わせた評価額は、当初の5000万円を上回ってしまうわけです。
つまり、相続時精算課税制度を使って贈与することでメリットがあるのは、将来、値上がりする可能性がある財産ということになります。贈与した時点で上昇する可能性を凍結することができるからです。
「値上がりする財産を贈与するのがトク」というセオリーからすれば、土地を贈与するのがベターとなりますが、相続時精算課税で贈与した土地は、相続時点で「小規模宅地の評価減」を受けられなくなることに注意してください。
その意味では、 c)のように、土地と建物を両方含んだ持ち分を贈与して共有名義にするパターンが賢明かもしれません。aとbのメリット・デメリットが相殺されるため、評価額が圧縮される可能性も低くなる代わりに、評価額が膨らむおそれも減ります。また「小規模宅地の評価減」を適用する道も残ります。
もちろん、共有名義にすることはメリットばかりではありません。権利関係が複雑になり、相続争いの種を撒くおそれもあります。さまざまな組み合わせがあるため、一概にはいえませんが、以上のような点まで考慮したうえで登記の仕方を検討することが大切です。
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