マイホームの税金・基礎編。持っているときかかる税金は? その2
低金利で預貯金の運用効果は相変わらず低くなっています。その上、公的年金に対する不安から、最近ではサラリーマンのマンション投資に対する関心も高まっているようです。そこで今回は、ワンルームマンションへの投資について、税金の観点から考えてみましょう。
【十文字良二】十文字会計鑑定事務所、税理士・不動産鑑定士
情報提供日/2008年11月26日

軽減措置がないため、取得時の税額はマイホームより大きい

 新築のワンルームマンションを買うときに、税金はどのくらいかかるのでしょうか。図1をご覧ください。

 ワンルームマンション投資については「少ない自己資金でサラリーマンでも投資でき、ローン返済完済後は個人年金になる」などと謳われています。少し前までは100%ローンも可能だったため、頭金ゼロから購入することもできました。ただ最近は、個人に対する融資についても金融機関の審査が厳しくなり、頭金を1〜2割用意しないと借りられないケースが増えているようです。そこで2000万円の新築ワンルームマンションを頭金1割で購入するケースを想定してあります。

 買うときにかかる税金の種類は、基本的にマイホームと変わりません。印紙税、登録免許税、不動産取得税の3つです。ただし、マイホームのような軽減措置が適用されないことが最大のポイント。まず、登録免許税は、建物の所有権保存登記、土地の所有権移転登記、それにローンを使う場合の抵当権設定登記があり、合計で13万6000円かかります。マイホームの場合は、建物の登記と抵当権設定登記に関して軽減措置があります。もしも、ワンルームマンションにも軽減措置が適用されていたら、税額はこの半分以下になるでしょう。

 次に、不動産取得税。こちらは土地・建物合わせて26万4000円です。マイホームの場合はやはり両方に軽減措置があり、適用されると税額がゼロになるケースも少なくありません。
 これに売買契約とローン契約にかかる印紙税を加えると、総額で43万5000円となりました。購入価格に対する割合は2%強です。

 専有面積が70平米くらいのファミリータイプのマンションでは、地域にもよりますが取得時の税金の合計が20万円前後に収まるケースが珍しくありません。これに対してワンルームマンションは、面積が3分の1で税額は2倍ということになります。マイホームに対するような軽減措置がないために、取得時にかかる税金が意外に大きいことを知っておきましょう。

 税金以外に、司法書士に対する登記代行手数料やローン保証料・事務手数料などを入れると、総額で100万円程度の諸費用がかかると覚悟しておいたほうがよいかもしれません。

月々の持ち出しなしで、資産形成することも可能だが・・・

 ワンルームマンション投資では「節税効果」が謳われているケースも珍しくありません。家賃収入から必要経費を差し引いた不動産所得がマイナスになった場合、給与所得などのその他の所得と損益通算することによって、所得税と住民税が減るというわけです。
 不動産所得のマイナスはあくまでも帳簿上のもので、実際のお金の出入り=キャッシュフローはプラスになることも少なくないため、「収入を増やしながら節税もできる」という説明も見られます。現実にはどうなのでしょうか。

 まずキャッシュフローを見てみましょう。図1と同じ物件で、年利3%、30年返済でローンを組んだとします。月額家賃は9万円(礼金・更新料は考慮にいれていません)、年間収入は108万円です。ローン返済は月々約7万6000円、年間で約91万円となります。

 この数字だけを見ると「ローンを払っても月に1万4000円、年間17万円も黒字になる」と思われるかもしれません。しかし、マンション経営では、この他にも経費がかかります。
 まず、修繕費や保険料などを収入の3%程度と見込んで3万5000円。他に固定資産税と都市計画税が毎年かかり、合計で約13万円。取得時の税金と同じように、保有時の税金についてもマイホームの場合は軽減措置がありますが、投資物件にはありませんから、けっこう金額がかさみます。

 以上、収入と支出を差し引きすると年間5000円のプラス。わずかながら手元に資金が残りました。「持ち出しなしで、ローンを完済すれば無借金の資産が手に入り、家賃収入が年金代わりになる」というわけです。
 とはいえ、状況次第で結果は変わることに注意してください。投資物件の場合、マイホーム向けの住宅ローンに比べて金利が高めで、変動金利が多い傾向にあります。将来、金利が上がって返済額が増えることも考えておかなければなりません。また、家賃が下がったり、空室期間が長引いたりすることもあり得ます。そうなると、収支が逆転して持ち出しが増える可能性も十分あるのです。

節税効果は初年度のみ?! あまり期待するのは禁物

 次に、節税効果を見てみましょう。他の所得との損益通算によって税金を安くするためには、ワンルームマンションの不動産所得が帳簿上で赤字にならなければなりません。家賃収入を上回る必要経費が計上されることで、不動産所得はマイナスになります。

 図3のa)をご覧ください。必要経費が200万円を超え、家賃収入を90万円以上も上回る赤字になっています。その結果、年収700万円で、年間の所得税と住民税を合わせて約52万円支払っていた人が、ワンルームマンションン投資をすることで約15万円の節税になりました。


 ただし、これは初年度のみ。2年目からは、不動産所得がプラスになり、節税効果はなくなってしまいます。その理由は、初年度の赤字を大きくしていたのが、取得時の税金や手数料などの一時的な諸費用だったからです。「節税効果」を謳っている広告などは、この初年度のみの効果を強調しているともいえます。実際には、2年目以降の経常的な経費は、それほど大きくなりません。


 一般には、節税効果で大きな位置を占めるのは「減価償却費」と「ローン金利」といわれます。「減価償却費」は、実際の出費を伴わないのに帳簿上は損金として必要経費に計上できるものです。数字のマジックのように言われることもあります。
 しかし、試算してみると図3の通り。減価償却費は約30万円(定額法)。意外に小さいですね。鉄筋コンクリートの建物は耐用年数が長い(事業用で47年)ため、1年間に計上できる経費としては大きくならないのです。仮に地主が、手持ちの土地に2000万円の木造アパートを建てたとすると、減価償却費は90万円を超えます。木造アパートの耐用年数は22年です。同じような金額でも構造によって大きく変わります。

 また図3の試算では「ローン金利」が50万円超と、大きな位置を占めていますが、これをすべて損益通算に回すことはできません。不動産所得だけの計算では土地・建物両方の金利を経費として計上できますが、その他の所得との損益通算をする際には、土地に対応する金利は損失として認められないのです。その分、マイナスが圧縮されてしまいます。

 このように「節税効果」には、あまり期待しないほうがいいかもしれません。これも一つの試算ですから一概にはいえませんが、投資をする前には、初年度だけでなく、数年間の事業収支予測をきちんとシミュレーションした上で判断することをお勧めします。

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