十文字先生の税務講座2009-借地権の設定された底地の税金は?

借地権や底地に関わる税金について、これまで3回に渡って解説してきました。いずれも売却や相続に当たって様々な制約がありますが、そのデメリットを解消する手法があります。借地人も地主もお金を使わずに、完全所有権を手に入れられる「交換」です。果たして、どのような仕組みなのでしょうか。そのメリットや利用上の注意点について、解説しましょう。

借地権や底地に関わる税金について、これまで3回に渡って解説してきました。いずれも売却や相続に当たって様々な制約がありますが、そのデメリットを解消する手法があります。借地人も地主もお金を使わずに、完全所有権を手に入れられる「交換」です。果たして、どのような仕組みなのでしょうか。そのメリットや利用上の注意点について、解説しましょう。
【十文字良二】十文字会計鑑定事務所、税理士・不動産鑑定士
情報提供日/2009年12月22日

底地のままでは相続発生で困ったことに

 前回の底地についての解説の最後に、借地権や底地は相続税評価を基に割り出した価額よりも、実際に取引される実勢価格のほうが低くなる可能性が高いことを指摘しました。このような財産を持っていると、相続が発生したときに困った状況に陥ります。

 借地権にしても底地にしても、更地のように簡単には売れません。特に、底地のほうは第三者には売りにくい。たとえ売っても評価額よりかなり低い金額でしか売れない、ということで相続税も払えなくなるおそれがあるのです。底地のままでは物納もほとんど認められません。

 そのため地主としては、相続の発生に備えて、早いうちに底地を換金性の高い資産(完全所有権の土地や現金)にしておきたいという意向を持っているようです。相続を考慮しなくても、底地の状態を解消したいという動機があります。たとえば、借地権を設定したときに比べて地価が上昇し、固定資産税が上がっているにもかかわらず、地代を上げることが難しく、収益性が悪い状態になっているケースなどです。

 資産の組み替えをするには、いくつかのシナリオがあります。
 まず、借地人に底地の買い取りを求めるのが一つ。しかし、得てして借地人には余裕資金がなく、買い取れないケースが少なくありません。
 次に、借地人に協力を求めて、借地権と底地を同時に売却する方法があります。これについては、借地人が住み替えに異論がなければ良いのですが、住み続けたいと思っているとうまくいきません。

 第3の方法が「交換」です。税法で認められている「固定資産の交換特例」を使うと、地主と借地人がともに資金がなくても、底地と借地権を完全所有権の土地にすることができます。どのような仕組みなのか、事例を基に解説しましょう。

お金をかけずに借地権と底地を完全所有権にできる

図1.借地権と底地を交換すると…?

 たとえば、都市近郊エリアで、80坪(約264平米)の貸地があるとしましょう。更地価格の相場は8000万円(坪100万円)、借地権割合は60%です。この上に、借地人が広い庭のある一戸建て(延べ床面積40坪程度)を持っています。敷地が広いため地代は月7万円とやや高め。負担に感じているうえに、建物が老朽化して建て替えを考えています。しかし、そのためには地主に承諾料を800万円程度支払わなければなりません。

 買い換えも検討しました。借地権付き土地を[8000万円×60%=4800万円]で売れると考えて不動産会社に相談すると、更地価格の50%、4000万円程度でしか売れないとの答。しかも、地主へ譲渡承諾料を500万円、仲介手数料が130万円以上かかりますから、手取りは3300万円そこそこしか残りません。

 一方、地主も相続対策として資産の組み替えを考えていました。借地権割合から逆算した底地の想定価格は3200万円。相続税評価額は[8000万円×80%×(1−60%)=2560万円]ですが、買い取り業者の提示は800万円。相場の4分の1、評価額の3分の1以下です。これでは他の財産を含めた相続税の納税資金にもなりません。そこで地主は、借地人に、借地権と底地の交換を提案したのです。

 税法上の交換特例は、同じ価値の固定資産を交換すると、譲渡がなかったものとして譲渡税が課税されないというものです。
 借地権と底地を交換した後の土地の比率は、相続税評価の割合に等しい60%対40%としましょう。そうすると、借地権32坪と底地48坪がちょうど1920万円で等しくなりますから、これを交換すると課税されずに済みます。つまり、借地人が借地権32坪を地主に譲渡、地主は底地48坪を借地人に譲渡することで、借地人は48坪、地主は32坪の完全所有権の土地を取得資金ゼロで手に入れることができるわけです。
 ※なお、借地人が底地を取得すると、不動産取得税、登録免許税はかかります。

図2.交換のメリット

 この交換によって、借地人は自由に建て替えができるようになり、地主は将来の相続への備えができるようになりました。
 交換比率は、必ずしも相続税評価に合わせる必要はありません。特別な利害関係にない地主と借地人であれば、お互いの話し合いで等価となる比率を決めてかまいません。実際には、借地権割合にかかわらず、5対5に限りなく近づく形で落ち着くケースも少なくないようです。各種の事情を考慮して、お互いに納得できる線で合意されると考えて下さい。

交換してスグの転売や用途変更には特例が使えない

 今回紹介した交換特例には、図3のような適用条件があります。基本的には、交換するのは同じ種類の固定資産であること。借地も底地も同じ土地ですから、その点では問題ないでしょう。通常の借地と底地ならば長く所有しているケースが多いので、2番目の所有期間の条件もクリアできます。

図3.固定資産の交換特例の条件

 注意したいのは、取得資産を譲渡資産と同じ用途に使うことが必要という点です。つまり、交換した後に、すぐに売却したり、住宅を事務所などに転用したりすると、特例が適用されません。たとえば借地権と底地を交換して、借地人が完全所有権になった土地をすぐに転売してしまうと、(旧)借地人には課税されます。

 前述の例でいえば、2段階で課税されてしまいます。まず、交換をした時点で、借地権の一部である32坪を1920万円で売却し、その代金で底地を取得したものとして取り扱われるようです。つまり、1920万円の売却代金に対して課税されます。
 次に、完全所有権になった48坪を売却する段階で、譲渡税がかかります。権利上は完全所有権になったといっても、税務上は、借地権部分の2880万円と、取得後すぐに売却する底地部分の1920万円に分けて取り扱われるのです。
 非常にややこしいのですが、最初の交換時の32坪=1920万円と、のちに売却する48坪=2880万円は、いずれも長期譲渡所得として20%の税率が適用されます。時間差はありますが結果は同じなので、[1920万円+2880万円=4800万円]の長期譲渡所得に課税されるものとして計算すると、税額は912万円(4800万円×95%×20%。古くから借りている土地で借地権を設定したときの権利金の額が不明なため、取得費を概算の5%で計算)。バカにならない金額ですね。
 底地部分は、取得価格と同額で売却できたものとすると、譲渡所得は生じないために税金はかかりません。ただし、譲渡益が発生した場合は短期譲渡所得となり39%の税率が適用されます。

 地主側が所有したままなら、こちらには課税されません。これを「片割れ交換」といいます。

 また、交換したときの譲渡資産と取得資産が等価ではなく、差額を金銭で補てんするケースもあるでしょう。その場合、差額がいずれか高いほうの価額の20%以内に収まっていれば、交換特例が適用されます。ただし、差額分を取得した側には一定の譲渡税がかかることに注意してください。
 必ずしも、この特例が有効に働かないケースもありますので、いくつかのシナリオの一つとして考えてみましょう。
 なお、譲渡税がかからなくても交換特例を使う場合は申告が必要です。


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