インタビュー【井村進哉氏】第3回

 

住宅ローンアドバイザーの創設 part3

 
  井村氏  
井村進哉(いむらしんや)
【プロフィール】
1953年石川県生まれ。78年中央大学経済学部卒業。95年小樽商科大学教授、96年中央大学経済学部教授・経済学博士。
現在、日本資産証券化センター理事長。(http://www.jasc.jp/index.html
中央大学研究開発機構地域住宅ローン不動産研究プロジェクト・ 住宅ローンアドバイザー制度研究ユニット研究責任者。ソウル大学経済研究所客員研究員、ソウル在住。『現代アメリカの住宅金融システム』(東京大学出版会、2002年2月)他、著書多数。
  現代アメリカの住宅金融システム
 
 
一人棟梁からFPまで、担い手は多彩に
--期待される住宅ローンアドバイザーですが、担い手はどんな方になりそうでしょうか?
井村 考えられる候補として中小の工務店があり、一人棟梁といわれる工務店さんの中にも取り組みたいたいと言っている方がいます。顧客のライフプランなどに合わせて住宅ローンの説明を行い、受注につなげる、という考え方が出てきているためです。
 住宅供給業者においても、消費者に適切なローンを客観的に提案することを可能にするために、住宅ローンアドバイザーの認定を受けていただくのが理想的です。
  井村氏
--ファイナンシャル・プランナー(FP)も候補になるかと思いますが。
井村  非常に重要な担い手になるでしょう。あるFPは、消費者が軽視されている住宅ローンは嫌いだと言っていましたが、住宅ローンアドバイザーが浸透すれば住宅ローン業界は借り手が主体となる、まともな市場になるだろうと言っています。
 現在、FPは12万人にのぼり、そのうち約5%にあたる5000人程度は住宅産業の中にいます。宅建業者には不動産の知識があり、不動産評価の能力を持っている。FPには物件に対する知識はないが、資金計画や金融商品の知識を持っている。宅建業者も、FPも、住宅ローンアドバイザーになることで、もう一段上がっていただけると思います。
  FP、宅建業者、双方の継続講習の中に、住宅ローンアドバイザーのプログラムを入れていただけるといいと思っています。
 
金融機関にも貸し出し先の多様化メリットが生まれる
--住宅ローンアドバイザーの制度化に対して、金融機関の反応はいかがでしょう。
井村 「このような制度ができると、消費者がローンを選択しなければならず、むしろ消費者に負担を掛ける」という言い方をされるケースもありました。
--選択する自由を負担と捉えるのかは、意見が分かれるところだと思います。
井村 そうですね。現在、住宅ローンの新規貸出は、メガバンク上位5行で全体の50%を超えています。
  地域金融機関の中には、住宅ローンを2〜3件成約させる程度ではコストがかかるだけなので、やらないほうがいい、というところもあります。一生懸命やっているところでは、ぎりぎりの金利を提供しているのに、住宅ローンアドバイザーが介在することで手数料が発生するのには耐えられない、という声も聞かれました。
 しかし信用がおける、リスクの少ないお客さんを紹介できることで金融機関にもメリットが生じます。
  井村氏
 
井村氏    たとえば住宅取得層の中心は、マンションを購入する35歳前後のサラリーマンで、リスクも小さく、メガバンクも貸したい。しかし注文住宅の施主は40代以上で自営業者が中心。明らかにリスクが高く、銀行が貸したがらない層です。そこで一人棟梁や工務店が住宅ローンアドバイザーとしてリスクを抑えた資金計画をプランニングすれば、金融機関としても貸しやすくなるはず。住宅取得者、供給業者、金融機関それぞれにメリットが生じるわけです。
 このように各方面でバランスのとれた形で住宅ローンアドバイザーが提案できればと思っています。
リバースモーゲージも視野に入れた展開を予定
--住宅ローンアドバイザーの次の段階として、シニアアドバイザーも制度化されるようですが。
井村  シニアの具体化は未定ですが、イメージとして、住宅ローンアドバイザーは住宅ローンに精通していて、シミュレーションやアドバイスができる、シニアはライフスタイル全般の中で住宅ローンについてアドバイスができ、将来の借り換えや繰り上げ返済についてもケアできる、という感じです(コラム1参照)。
 さらに重要なポイントとして考えているのが、リバースモーゲージ(コラム2参照)です。
 
コラム1/住宅ローンシニアアドバイザー認定のための講習項目(案)
・コンプライアンス/ 住宅ローンに係る法律の理解。 アドバイザーへの指導監督

・個人情報の保護/ 個人情報の保護と管理

・住宅ローン関係で必要な知識/ 資金計画、将来の住宅ニーズ、 住み替え等に応じたアドバイス、 各金利タイプのメリット・デメリット・専門的アドバイス、民間と公的ローンの特徴、 返済負担率や返済期間のアドバイス、 諸費用、税金、返済開始後の融資条件変更、問題の解消など
 
コラム2/リバースモーゲージ
 居住する住宅を担保に自治体や金融機関から融資を受け、これを月単位の生活資金として利用。契約終了後や死亡時に住宅を処分して借入金を一括完済するもの。 井村氏
 マイホームに住み続けながら、不動産を資金化できるのが特徴。地価の下落が続くと担保不足になるという問題もあるため、不動産価値を見極めた融資金額の決定、また担保不足になったときの対応など、課題もある。
 
--リバースモーゲージもアドバイスに含めていく、ということですか。
井村  リバースモーゲージは、住宅の最終的な処分価格が評価できなければ組めない金融商品です。住宅を資産として考えた場合、個々の不動産を担保にどれだけ貸すことができるのか。また担保価値と残債に格差が生じた場合、信用補完として何が必要なのか。それらを含めてアドバイスできなければ、リバースモーゲージは組めません。
  それを住宅ローンアドバイザーが金融機関に提案できるようになれば、それが本物、シニアの名にふさわしい住宅ローンアドバイザーだと思います。

 自分に合ったローン、資金計画でマイホームを取得し、将来はその家を担保に資金を借り入れ、老後資金などに生かしていく。そのお手伝いを住宅ローンアドバイザーが行なうことが重要だと考えます。
 
--今後のご予定は?
井村 2005年には最初の認定ができそうです。最初は宅建業者やファイナンシャル・プランナーなど、住宅販売に携わる方を中心に、徐々に拡大して送り出したいと思っています。
 
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