【十文字良二氏】(1)
土地フィーバーを斬る/その1『土地神話復活!? 16年ぶりに公示地価が上昇に転じた!』
2007年度の公示地価が発表されました。数年前からくすぶり始めていた都心部の“地価マグマ”が、噴火を始めたようです。本サイト税務講座の講師で、不動産鑑定士でもある十文字良二先生に、地価の最新動向を伺ってみました。
十文字良二氏
十文字良二氏
十文字会計鑑定事務所代表・税理士・不動産鑑定士
【プロフィール】
1981年、税理士登録。88年、不動産鑑定士登録。91年、財団法人不動産近代化流通センターの講師に選任。94年、東京地方裁判所鑑定委員会委員に選任。2001年、財団法人区画整理促進機構アドバイザーに就任。日税不動産鑑定士会会員。著書に『CAP』『動物病院のファイナンシャル・プランニング』(チクサン出版社)、『月刊不動産フォーラム21』(大成出版社)、『土地の税務評価と鑑定評価 日税不動産鑑定士会編』(中央経済社)等。本サイト税務講座でも好評連載中。
情報提供日/2007年3月28日
地価が右肩上がりに伸び始めた
--商業地が全国平均で2.3%、住宅地も同じく0.1%、全国平均でともにプラスになったのは実に16年ぶり(主要な変動率は図参照)。まず、今回の動きについてどうとらえていますか。

十文字氏 いよいよ勢い良く上昇し始めたという感じですね。バブルのピークだった1990年を境に実勢地価は下がり始め、土地取引の代表的な指標である公示地価も92年から2005年まで14年連続で下落傾向を示していました。昨年になってようやく、15年ぶりに上昇に転じたんですが、まだまだ全国平均ではマイナスのままでした。東京、名古屋、大阪、福岡などの大都市圏の商業地が動き始めた程度で、上昇の幅も小さかった。 2007年度地価公示/エリア別変動率

 今年は、大都市圏の都心商業地、高度商業地が完全に右肩上がりになり、グーっと伸びています。その動きが住宅地にも波及して、また都心部から郊外まで厚みを持って上昇し始めたといえますね。
“遅行性”のある地価指標が、やっと実勢に追いついた
--都心部は数年前からミニバブルが発生しているともいわれています。公示地価の数字がやっと追いついてきたといえるのでしょうか。

十文字氏 十文字氏 確かに3年以上前から実勢地価は上がっているようですね。ただ、公的な地価指標には遅行性があるといわれています。公示地価は、国土交通省土地鑑定委員会が全国の約3万地点の標準値を選んで、毎年1月1日時点の価格を出し、3月下旬に国交省が公表するものですが、実際の調査時点は前年の11月頃までなんです。ですから、発表される時点とは、どうしても4〜5ヶ月のズレが出てしまう。

 また、公示地価は、地価公示法に基づいて「正常な価格」を公示するのが目的です。一般的な土地取引の指標にすると同時に、公共事業用地の取得価格算定の規準や、国土利用計画法に基づく土地取引の規制における土地価格算定の規準にもなりますから、市場で取り引きされている異常値を地価調査の中に取り込むわけにはいきません。実際の取引を「正常値」に修正していかないといけないのです。

 新聞や雑誌では突出した数値を取り上げますから、どうしても地価指標のほうは控え目になりがちになるのは仕方ないでしょう。
 毎年数%ずつしか変動がないときには、あまりブレはないのですが、現在のように大きく動く時代は、なかなか実勢価格はつかまえにくい面がありますね。


--地価に関連するニュースでは「路線価の3倍で取り引きされている」という声もよく聞きますが、「路線価」と「公示地価」の関係は?

十文字氏 「路線価」も公的な地価指標のひとつです。相続税や贈与税を計算する課税基準になるもので、主要な道路に接した標準的な宅地の1平米当たりの単価で示されます。毎年夏頃に国税庁から公表されます。

 この他に、市町村が調査する固定資産税の課税基準となる「固定資産税評価額」、都道府県知事が毎年7月1日時点の価格を調査して9月下旬に公表する「基準地価」などがあります。これらの地価指標の中心になるのが公示地価で、路線価は公示地価の8割、固定資産税評価額は同7割を目安に算定されているのです。いずれも年に1回、ないしは3年に1度の評価替えですから、公示地価と同じように実勢価格に比べてやや遅れがちな点は否めませんね。

 地価論議の中で、公示地価より路線価の数値がよく出てくるのは、実際の投資判断では相続税対策などの税務に直結する数値をベースに考えることが多いからではないでしょうか。

十文字氏

ファンド主導の地価バブルが起きている
--明らかに過熱している気がしますね。これだけ地価が急上昇している要因は何ですか?

十文字氏 十文字氏 やはり世界的な“金余り現象”の中で、日本の超低金利と割安感のある不動産に目が向いているということでしょう。以前のバブルでは一般事業法人の土地取引が地価上昇をリードした面もありますが、今回は、いわゆるファンド(投資家の運用資金)、なかでも外資系ファンドが運用先を求めて日本の土地やビルに集まっているのがポイントです。

 最近はオフィスだけでなく、レジデンス(住宅)にも投資マネーが向いています。また、都心のマンション用地が少なくなっているため、まとまった土地が出ると競合するため入札制度を取るケースが増えているんです。相対取引に比べて、入札では高値になりやすいという傾向がある。採算が合うのか疑問に思うほど跳ね上がることもあります。最近の地価が過熱気味になっている要因のひとつといえるでしょう。

--次回は、地域別の詳細な状況についてお伺いします。


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