インタビュー【山崎隆氏】
緊急インタビュー!激動の2009年、マンション価格はどうなる?
2008年は、年初から都心の地価、中古マンション価格が下がり始め、周辺に波及。後半は新築マンションも実質的に値下がりを始めました。深まる金融危機、忍び寄る不景気・・・、激動の2009年、中古マンション市場を始め、マイホームの価格はどうなるのか? そして、どう動くべきか? 近著『お金に困らなくなるマイホームの買い方・つかい方』で不透明な時代の針路を指し示す、不動産コンサルタントの山崎隆氏に伺いました。
山崎氏
山崎隆氏著書『東京のどこに住むのが幸せか』(講談社)
山崎隆氏
不動産コンサルタント
【プロフィール】
1960年東京生まれ。学習院大学経済学部卒。大手住宅メーカー、不動産コンサルティング会社などを経て、96年に不動産と相続のソリューション企業、財営コンサルティング(株)を設立、同社代表取締役。一般消費者向けから法人向けサービスまで幅広く対応。一級FP技能士(厚生労働省認定)、CFP®(NPO法人日本FP認定)。著書に『東京のどこに住むのが幸せか』(講談社)、『東京マンション資産価値予測DATA BOOK』『お金に困らなくなるマイホームの買い方・つかい方』(ダイヤモンド社)、など多数。
財営コンサルティング公式HP:http://www.zaicon.co.jp/
情報提供日/2009年1月7日
前回の「バブル崩壊」より厳しいが、だからこそチャンス

--首都圏の都心部も含め全地域で地価の上昇地点がなくなり、総崩れの状態だと言われています。現場の実感値としては、いかがですか。

山崎氏 1990年代初頭のバブル崩壊時よりも酷いですね。私の周りでも、あの苦境を乗り越えてきた強者たちが、ばたばた倒れている。あまりにも動きが急すぎて、対策が取れないというのが実状です。
 ただ、この時期、不動産に関してどう行動するべきかという観点でいえば、近来まれに見るチャンスだと思います。

--えっ、まだまだ下がりそうな、この時期に買うのがチャンスですか?

山崎氏

 マスコミは十把一絡げに恐慌だ、不景気だと煽って、不動産全般が暗黒時代のようにいっていますが、個々の不動産をマクロ経済と同列に扱ってはいけません。こんな時期だからこそ、冷静に判断してほしい。
  現在は、市場がパニックに陥っているため、良い物件も悪い物件も一緒に下がっている。本来、落ちる必要のないところまで落ちてしまっているんです。これを好機と見て、買いに動いている人たちがいます。現に、中古マンションの取引は活発とすらいえるのです(図1参照)。「人と違う動きをする人だけが儲ける」という法則にしたがえば、周りが一斉に手を引いている今動くのが、ある意味では賢者の選択でしょう。

 もっとも、現在は個人でも資金の手当が難しいともいわれます。銀行にとって、住宅ローンはもっとも安全な運用先だったのですが、延滞率や事故率が増加して、安定的な収入源ではなくなってきた。小金を持っている個人が一番かもしれません。

価値と価格のバランスが崩れ、掘り出し物が探せる時期

--現在のように相場が動いている時期は、どこも値下がりしそうな気がしてしまい、選ぶのに躊躇してしまいます。

山崎氏 以前から指摘していますが、不動産の適正な価値(value)を測れるのが収益還元法です。市場に出回っている価格(price)に惑わされてはいけません。価値と価格のバランスを見るのです。
 公式は単純です。「価値(V)>価格(P)」なら「買ってもいい」、「価値(V)<価格(P)」なら「買うべきではない」。現在は、「価値>価格」となっている“掘り出し物”を見つけることができる時期といえます。

山崎氏

 よく「不動産に掘り出し物はない」と言われますが、それは市場が安定していて、不動産のプロが動いている時期のこと。そんな時は、プロが良い物件を先に取り引きしてしまうので、一般のエンドユーザーは残りものしかつかめない。しかし、今は資金繰りが付かないためにプロが動けない。市場も混乱している。だからこそ、個人でも参入できるわけです。
 株式市場も同じですね。暴落で優良企業の株まで下がっている。しかも、外国人投資家や機関投資家が売り一色なのに対して、個人投資家は18年ぶりの買い越しになっているでしょう。歴史的な安値をチャンスと見ている人は動いているのです。

家賃の下がりにくい街で選べ

--簡単に収益還元法で適正価値を割り出す方法はありますか。

山崎氏 「賃料÷キャップレート(期待利回り)」というのが収益還元法の基本原理です。賃料は、空室率を考慮した賃料収入から必要経費を控除した「純収益」で計算してください。キャップレートを設定するのがけっこう難しい。地域の不動産マーケットに特有の水準があるのですが、厳密に計算すると煩雑になるので、概算値を出せる簡単な計算式を示しておきましょう。
 計算式は

[月額賃料×12カ月]×係数÷キャップレート

です。係数とキャップレートは、図2の数値を当てはめて下さい。たとえば、都心一等地で、月額賃料が25万円だったら、

25万円×12カ月×0.85÷5%=5100万円

--この金額より低い金額で売り出されていたら、割安なので買ってもいいというわけですね。

山崎氏 ええ。もちろん、マーケットに合ったプランかどうかなど、個別の物件を見る上で考えるべき要素はありますが、市場における価格と価値のバランスという点では、概ねそう考えて差し支えないでしょう。
 ただし注意して欲しいのは、現在のように市場が混乱していると、この市場原理が崩れる可能性があることです。収益還元法で割り出した価格は、本来は適正な価値を反映しているはずですが、それが下がるおそれもあります。
 原因は2つ考えられます。1つは、金利が上がった場合。金利が上昇するとキャップレートも高まるため、収益価格が下がるのです。しかし、現在は世界的な低金利状態ですから、これは考えにくい。
 2つ目の理由は、家賃が下がった場合。収益性が落ちるということで、こちらが問題です。

-- 地価や中古マンション価格に比べて、家賃の大幅な下落が起きているというニュースは、それほど聞きませんが・・

山崎氏 今のところはそうですね。賃料相場は、価格相場に比べて遅れて反応するという性質がありますから。ただ、今後、さらに市況が悪化してくれば賃料が下がることも考えられます。
 そこで、賃料の「底値抵抗力」が強い街を選ぶ必要があります。

--「底値抵抗力」というのは?

山崎氏 市場が全体的に悪化しているときは、どんな優良物件でも釣られて下がることがあります。多少の下げは仕方ありません。そのままズルズルと下がってしまうか、それとも一定のレベルで持ちこたえるか、その差が出てくるのです。つまり、高いレベルで持ちこたえ、賃料が下がりにくいことを「底値抵抗力」が強いといいます。

--では、家賃が下がりにくいエリアの条件は?

山崎氏 今回著した『お金に困らなくなるマイホームの買い方・つかい方』で詳しく解説していますが、一言でいうと「高額所得層のファミリータイプの賃料が高い街」です。
 賃料を見る場合に除外してほしいのは、赤坂や六本木などにある外国人向け超高級賃貸マンション。家賃が100万円を軽く超えるところが珍しくありません。これだけの賃料を支払えるのは法人契約です。この市場は、個人の住居系マーケットというより、法人オフィス・マーケットに近いでしょう。ですから、収益還元価格を割り出す賃料のベースとしては、標準的な70〜80平米のファミリータイプのマンションで、せいぜい月額30万円程度までの物件をベンチマークに使ってください。
 こうした賃貸市場をウォッチングしていると、自ずと買い得物件が見えてくるはず。この時期に、資金調達のできる人なら、港区や渋谷区で優良なマンションを買えるチャンスといえるでしょう。

--どうもありがとうございました。

(了)