インタビュー【田方 みき氏】
どうする? ローン返済で困ったら… モラトリアムは甘くない
「住宅ローン返済に困る人が続出!」「ボーナス激減で、ローンが払えない」--そんなニュースが頻繁に聞かれるようになっています。政府の“モラトリアム法案”も議論されるなか、本当に困った人たちは、どう対処すればいいのか。近著「即効!! 住宅ローンを今すぐ軽減する本」(発行:C&R研究所)で、ローン破綻を回避し、返済をラクにする方法を指南している田方みき氏に伺いました。
田方みき氏
田方みき氏著書『即効!! 住宅ローンを今すぐ軽減する本』(C&R研究所)
田方みき氏
フリーライター
【プロフィール】
広告制作プロダクション勤務後、フリーランスのコピーライターとして活動。現在は主に、住宅ローンや税金など、住宅にかかわるお金についての記事制作や、不動産関連の広告制作に携わる。共著書に「マンションは絶対『中古』を買いなさい!」(成美堂出版)などがある。

情報提供日/2009年12月19日

ちょっと待った!「モラトリアム法案」に乗っかると危険?
図1.中小企業等金融円滑化法の骨子(通称「モラトリアム法」)

--いわゆる「モラトリアム法案」(中小企業等金融円滑化法案)が施行されましたね。中小企業や個人が借入金の返済に困ったとき、返済猶予など貸し出し条件の変更に応じる努力義務を金融機関に対して課したものです。個人の住宅ローンの場合、金利の変更や返済期間の延長などが行われるのではないかといわれています。大手銀行などでも、相談体制を強化しているというニュースが流れています。これで少しは一息つけるのでしょうか。

田方 「モラトリアム法」に安易に乗っかるのは危険だと思いますね。実際の条件変更では、金融機関が簡単に適用金利を下げたり、返済期間を延長したりするとは思えないからです。一時的に返済額を低くする方法は従来からありました。ただ、それは金利変更や返済期間の延長を伴うものではなくて、当初の返済期間に収まるように後で増額することを前提にしたものです。

 返済期間を延長してくれる可能性もありますが、たとえば35年なら35年という最長返済期間がマックスになるはずです。その枠の中で、最初に20年や25年などの短めの返済期間を選択していた人とか、当初35年返済で組んでも十何年か返済が進んで残存期間が短くなった人が、35年に伸ばすといったケースでしょう。仮に、そのような返済期間の延長ができたとしても、定年までには返済を終えなければなりません。収入がなくなれば返済できないわけですから。

--そうすると今回の法案は、あまり実効性がないということですか?

田方 「借り手救済」といわれ、借金が棒引きになるかのように誤解していた人もいるようですね。しかし、借金が大きすぎて潰せない大企業に対して銀行が債務放棄をすることはあっても、個人の住宅ローンで返済を免除することは考えられません。金融機関が条件変更に応じるかどうかは強制ではなく、あくまでも“努力義務”です。仮に応じたとしても、一時的に返済額を減らすだけで、いずれ返済額を従前以上に増額するか、繰り上げ返済をしなければならなくなるのは目に見えています。その意味では、近い将来に増収があるとか、相続などでまとまった資金が入る予定がある人以外は、モラトリアムに乗らないほうが良いのではないでしょうか。
 半年前に比べて、銀行の姿勢も柔軟になってきたことは事実です。メガバンクでも個別相談を受けてもらえるようになってきました。ただし、金利減免など、虫の良い希望が通ると期待するのは早計です。

自己破産や個人版民事再生も、そう簡単じゃない

--会社の業績悪化で収入の激減や、ボーナス大幅カットなどが珍しくありません。目先の支払いが急に苦しくなってしまった場合は、どうすればよいのでしょうか。

田方 次のボーナス分が払えないといった差し迫ったときは、預貯金を取り崩すか、親兄弟から融通してもらうなどして、急場をしのぐしかないでしょうね。くれぐれも消費者金融など、他の借金で穴埋めするのは避けてください。多重債務に陥って、自己破産に追い込まれる例が多いからです。最近は、マイホームを手放さずに負債を整理できる「個人版民事再生」の利用者が増えているようですが、申し立てから認可までに半年から1年近くの時間もかかりますし、その間の住宅ローン支払いが免除されるわけでもありません。

図2.住宅ローンの滞納から競売までの流れの例

--一度くらい返済が遅れても、すぐにどうにかなるということはないんですよね。

田方 いえ、延滞も危険です。一度払えないものを翌月に払える保証はありません。ずるずると延滞が続いて、にっちもさっちも行かなくなる恐れがあります。延滞が3カ月から6カ月続くと、金融機関は個人信用情報に「金融事故」として記録し、残債の一括返済を請求してきます。最終的には、競売という法的手続きに進み、家を失ったうえに借金だけが残る結果を招いてしまうのです。

--そうなると、自己破産しかないかもしれませんね。とりあえず借金はなくなりますから。

田方 ただ、自己破産にも死角があります。ローン返済が滞っているくらいですから、ほとんどの人は、自宅の固定資産税や住民税なども納めていないケースが多いでしょう。これらの税金の滞納分は、自己破産しても免責されません。督促状が何度来ても支払わないと、最悪、給与の差し押さえを受ける場合もありますから心してください。預金口座から強制徴収された例もあるそうです。

家計のリストラ、ローンの見直しが先決

--返済が苦しくなってから考えたのでは遅いということですね。

田方 はい。ですから、初めに慎重な資金計画を立てることも大切ですが、返済が始まってから、家計や経済情勢の変化にどう対処できるかを考えておくことも必要です。

--返済が苦しくなりそうになったとき、まず何をすればよいのでしょう。

田方 「家計のリストラ」をしてください。家計の収入と支出の現状と将来の予測を整理して、家計の中で住宅ローンの返済がどのような位置づけになっているかを把握します。収入が減って返済が苦しくても、近いうちに収入アップが見込めるなら、一時的な返済条件変更でもカバーできるかもしれません。しかし、収入アップが難しいなら支出を減らすしかないでしょう。

 たとえば、家計の支出に占める割合が大きいのは教育費です。私立の高校・大学に行く予定だったのを国公立にするとか、私立でも奨学金や授業料の割引制度を活用するなど、さまざまな方法が考えられます。保険の見直しも効果的です。

図3.借り換えの借入条件の例

--それでも返済に余裕がない場合は?

田方 ローン自体にメスを入れる必要がありますね。ただし、条件変更をするのは、先ほど指摘したように両刃の剣です。返済額を減らしても後で反動があります。それよりも先に検討したいのが「借り換え」でしょう。高い金利のローンから低金利のローンに組み換えることで返済額を抑えることができます。具体的なノウハウは、本書を参考にしてください。この本を執筆した2009年春頃に比べて、借り換えの条件は厳しくなくなってきました。最近は自宅の担保評価を高めに見てくれたり、収入基準についても妻のパート収入を考慮に入れてくれるようになるなど、柔軟になってきたようです。
 銀行は敷居が高くて、門前払いされるというイメージが強いのですが、まずは相談に行ってみることをお勧めします。返済が行き詰まる前に、早め早めに手を打ってください。

(了)