インタビュー【浅井秀一】最終回

 

古い常識を捨て新しい常識に着替えよう

 
浅井秀一氏  
浅井 秀一 (あさい しゅういち)
【プロフィール】
有限会社ストックアンドフロー代表取締役。ファイナンシャルプランナー(CFP)。早稲田大学在学中に相続と法人(同族会社)の清算を体験し、昭和63年に学生初のFP資格取得者となる。卒業後、独立系FP会社を経て現職。おもに個人に対するファイナンシャルプランを作成する傍ら、雑誌・新聞等への原稿の執筆や、講演会などで活躍中。「住宅ローンは、いま借り換え・繰上げ返済しなさい」(ダイヤモンド社)等の著書がある。
 
FPに相談する重要性が増す
浅井秀一氏  
--公庫、年金をフル活用すればいいという常識が変わった今、不動産会社が立ててくれる資金計画にも変化があるのでしょうか。
浅井 最も金利の低いローンや、不動産会社にとって好都合な提携ローンを提案してくるケースが多いですね。返済期間は相変わらず、最長。これでは個々のユーザーにとって最適な資金計画は組めません。さすがにボーナス返済は以前に比べて抑えているようですが。
 
--商品の多様化によって、ローン選びがかなり複雑になっているように感じます。ファイナンシャル・プランナーに相談する必要性も高まっているのではないでしょうか。
浅井 昔なら皆同じ資金計画で良かったものが、今ではさまざまなプランが考えられますから、専門家が生きてくるはずです。
ファイナンシャル・プランナーによって意見は様々でしょうが、安全重視でいきたい、低金利を活用したいなど、資金計画に対して明確な希望があれば、それぞれに沿った提案をし、さらにプロの視点から別の提案もしてくれるはずです。プランごとにメリット、デメリットがあり、絶対的な答えはありません。最終的に判断するのはご本人です。自分の借金ですから、自己判断できるような勉強はしておくべきですね。
 
返済額に占める元金が半分以上なら『いいローン』
--相談にいらっしゃるのは、どんな方ですか。
浅井 勉強した人ほど、相談にいらっしゃいます。来週には契約、という人も多いですね。契約するつもりでいたものの、考えないとマズイのではないかと不安になるのでしょう。とはいえ、長期的なデフレで大変だ、ということは認識されています。社会保険料アップや増税で、給料が増えてない、手取りはもっと増えてない、という状況のなか、返済は容易ではないと認識されているのはいい傾向だと思います。いずれにせよ、どのような時代でも大切なのは、『いいローン』を組むことですね。
 
--『いいローン』とは?
浅井 元利均等返済の場合で、返済額の半分以上を元金が占めているのが、『いいローン』です。
  浅井秀一氏
  たとえば元利均等で2500万円を借りたとして、7年前の10年固定では金利が4%、35年返済なら毎月返済額は11万円強で、返済当初はそのうち4分の3が利息です。一方、昨年春頃の金利水準(10年固定で2.4%程度)なら、同じくらいの返済額で25年返済にできた。返済当初から返済額の55%が元金です。このように返済額の半分以上を元金が占めていれば、借金が早く減るいいローンです。高金利、長期返済では利息負担が減るまでかなり時間がかかりますが、いまの金利水準で25年程度なら、最初からどんどん元金が減っていきます。60歳までに返済が終わる人の場合は、とくに手を加える必要はないでしょう。
 
コラム1.「いいローンの条件」
固定金利選択型10年モノの金利で2500万円借りた場合
固定金利選択型10年モノの金利で2500万借りた場合
 
繰り上げ返済はリカバリーが目的
浅井秀一氏  
--繰り上げ返済などの必要がない、ということですか。
浅井 繰り上げ返済をゴルフに例えると、バンカーショットです。高い金利で借りて失敗したから、頑張らなければならない。一方、これから買う人は最初からいいローンが組めるわけで、繰り上げ返済というバンカーショットを打たなくてもすむようにすることが十分可能だ、ということです。繰り上げ返済を前提に考えても、挫折する人がたくさんいます。繰り上げ返済を考えるくらいなら、最初からグリーンのど真ん中を狙いましょう。
 もうひとつ、繰り上げ返済も運用だ、ということを覚えておきたいですね。1年後のローン残高が2000万円あるとします。金利が3%で、100万円繰り上げ返済すると、1年後のローン残高は1897万円。繰り上げ返済した100万円に加えて、100万円×3%で、3万円借金が減ったことになります。3%で運用した場合と成果は同じですね。以前の運用環境では、繰り上げ返済のほうが効果的だったでしょう。退職間近の人なら繰り上げ返済が確実ですが、今40歳で、あと20年で完済できるという人なら、20年の運用で考えた場合、ローン金利以上で運用できる可能性もあるでしょう。その場合、運用でお金を増やしてから返済したほうが効率的なのです。
 
コラム2.金利の違いで繰り上げ返済の効果はどう変わる?
金利の違いで繰り上げ返済の効果はどう変わる?
 
--運用環境や借入金利によって考え方が変わっていくわけですね。
浅井 時代が変われば常識も変わるということです。デフレのときは借金の返済とバランスシートの改善が大切ですが、インフレの時代には借金も財産です。ふた昔前は、土地神話、昇給神話、インフレ神話という3つの神話があったので、借金なんて怖くなかった。でも3つともひっくり返り、「借りすぎてはいけない」「早く返す」がこの10年あまりの常識になりました。そして今、そろそろまた、ローンに対する考えを変えるべき時代がやってきたと感じています。そこまで引き締めようと考え過ぎなくても少し緩めてもいいかな、という状況ですね。
 マイホームはないよりあったほうがいい、とはいえ、売れる価値のある物件の見極めも大切。いずれにしても、いい物件を、いいローンで、買いましょう。
 
前回へ 次回へ
↑このページの上部
住宅ローンを知ろう トップ